平和憲法と共生六十年
 ―憲法第九条の総合的研究に向けて―
   著 者:小林直樹 著
        (東京大学名誉教授)
        
    ISBN4-903425-01-0 C3032
    定価[本体10,000円+税] A5判 上製カバー 710ページ



表紙


一貫した積極護憲の発言、 
   積極的平和政策への模索

[著者のことばより] 憲法9条という世界に類例のないこの特異な条項は、種々の偶然も加わって生まれたものであるが、まさに「核時代」にふさわしい理性的選択の所産であった。日本はこれによって、「人類主権」「世界連邦」の確立に向けて、最初の巨歩をしるしたといっても過言ではなく、この9条の理念を貫いて積極的平和戦略を展開することで、アジアの安定と自らの安全保障を武力なしに達成出来るのである。

           
    第一部 総 論 平和憲法の理念と現実
      第一章 平和憲法の理念と現実
      第二章 平和憲法の誕生史
      第三章 憲法九条の総合的考察
      第四章 世界の中の平和憲法

    第二部 平和憲法の変動過程
     T 冷戦下の諸状況
      第一章 判例に見る平和主義と安保条約
      第二章 憲法判断の難関
      第三章 七〇年代の憲法状況
      第四章 平和主義の曲がり角
      第五章 司法の後退
     U 冷戦後の諸状況
      第一章 湾岸戦争と平和憲法
      第二章 イラク戦争と日本
      第三章 改憲運動に直面して
      第四章 改憲運動の思考様式

    第三部 憲法第九条の政策論
      第一章 平和憲法下の安全と防衛
      第二章 冷戦下の平和安全保障政策
      第三章 平和憲法に基づく積極平和政策の構想
      第四章 東アジア共同体の構想と問題


[著者はしがきより]

  私が平和憲法と共生してきた六十年間、日本は自らの戦争で人を殺すことなく、また殺されることもなく過ごしてきたけれども、その支えとなってきた憲法そのものは、政治の嵐の中で揉まれ続けてきた。そして本書を送り出す時点で、憲法九条はその存立を脅かされる難局に立たされている。――それにつけても生々しく想起されるのは、平和憲法に先立つ戦争→敗戦の歴史である。私が青年期まで生きた二十数年のその“歴史”は、数え切れない深刻な印象を刻んできたが、とりわけ内外における戦争犠牲者たちの痛恨の思いは、“戦争するべからず”という声になって、私の心に響きつづけている。戦陣から生き残って帰り得た一人としては、私は“不戦の誓い”を――“靖国参拝”という自己欺瞞の形式ではなく――平和憲法の支持と実現によって果たすべきだと考えてきた。本書の拙い諸論稿も、戦争で不条理に殺されていった無数の人々の無念の思いに背中を押されて、つづられた感がある。偶然に生き残れたものの小さな作業の積み重ねが、彼ら死者たちへの鎮魂の花束となり、更にこれから生きていく人々への一つの餞(はなむけ)になりえたら、大きな幸せである。
    二〇〇六年、春の陽光の中で

小林直樹